データクレシスではデータベースが重要な役割を果たす。現在モバイル・テクニカでは、データベースはオリジナルのものを使用している。ユーザ企業が望むシステムを柔軟に提供できることが最大のメリットだが、その一方で、案件ごとにカスタマイズが発生し、開発費がかさむ。これを解決するために、アイエニウェア・ソリューションズの「
SQL Anywhere Studio (SAS)」の採用を決めた。
「データクレシスでは、暗号化されているファイルに対し閲覧・更新などの操作をしようとすると、カギ取得のためにデータクレシスサーバにアクセスします。データベースは、そのカギの管理とユーザ権限の管理、またアクセス/操作履歴の記録という、重要な機能を果たすものです。この重要さゆえに、バックアップ/負荷分散を考慮したデータクレシスサーバの複数台設置、また、大規模組織に見られる拠点毎の設置及び管理など、システム構成上複数サーバは必然となります。サーバで持つカギや権限の情報は、どれか一つのサーバで更新された際、他のサーバへ速やかに同期される必要があります。また、アクセス/操作履歴といった情報は各サーバから必要に応じて収集する必要があります。この2つのまったく違う機能を、アプリケーションに依存せず、製品として持つ機能で効率的に実行できるデータベースがSASでした。
更にデータクレシスの導入企業は、中小企業から国内外で事業を展開する大企業までさまざまです。特に大企業では、小規模の試験導入からスタートし、会社全体への導入へと展開するため、規模に合わせたデータベースの設計が求められます。その点でもSASは、部署単位の小規模システムから1万クライアントを超える大規模システムまで、柔軟な対応が可能でした。分散型の処理が可能なこと、製品の安定性とスケーラビリティ、価格メリットが選定の大きな要因となりました」(株式会社モバイル・テクニカ セキュリティプロダクト事業部 営業部長 板倉行男氏)。
2005年4月の個人情報保護法施行時には、ファイルが入っている書庫全体にカギを掛けるソリューションが数多く登場した。しかし、それも今となっては時代遅れになりつつある。その一方で、セキュリティの分野は企業からのニーズも高く、市場も急速に広がりつつある。機密情報の管理において、システム内部統制に対応するアプローチをとるデータクレシスが、セキュリティ対策の主流になる可能性は大きく広がっている。
セキュリティ対策、コンプライアンス対応として導入を急ぐ民間企業のほか、個人情報や国家の機密情報を抱える官庁・地方自治体からのニーズは高い。以前はセキュリティの導入に対して、コストパフォーマンスを求める企業が多かったが、現在ではそうした声も少なくなった。経営者の間で、「情報漏えい」=「会社の存亡の危機」という認識が常識となってきたからだ。現在、1万クライアントを超える規模でデータクレシスの導入を検討している企業も数社でてきており、情報漏えいリスクを回避するセキュリティ対策の重要性は高まる一方だ。モバイル・テクニカでは、データクレシスの英語版の開発も進めていく予定だ。ITシステムが企業活動の根幹を担うようになった今日、情報はいとも簡単に国境を越える。今後は国内の企業だけでなく、アメリカ、アジアなどに開発・生産拠点を持つグローバル企業への導入も推進していきたい考えだ。