「モバイルDB搭載のハンディターミナルで顧客情報を守るルート営業支援システム」 |
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2007年 WEDGE 6月号掲載 |
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競争の激しい飲料業界で常に競争優位を保持するには、受注から納品までのリードタイムの短縮や、配送業務の効率化に、ITの活用が必須となっている。単なる受発注業務のシステム化だけではなく、顧客情報漏えい事故を未然に防ぐための仕掛け作りや、営業担当者の情報武装につながるインフラ作りなど課題も多い。有効なソリューションとして注目されているのが、モバイルデータベースとモバイル接続を利用したデータベース同期ソリューションだ。北陸コカ・コーラボトリング株式会社と株式会社ヒスコムは、ハンディターミナルと携帯電話によるモバイルネットワーク接続を活用したモバイル新受注システムを稼働させる |
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●受発注業務の分散化を目的にハンディターミナルを導入 |
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長年コカ・コーラシステムでは、商品開発と宣伝・マーケティングは日本コカ・コーラ、製造・販売は全国に14
社ある地域ボトラー各社と分業して営業展開してきたが、2006年、製造を全面的にコカ・コーラナショナルビバレッジ株式会社に移管し、ボトラー各社は卸およびフルサービス(直営自動販売機の管理運営)に特化したセールスカンパニーとなった。このうち、富山・石川・福井・長野の四県をカバーしているのが北陸コカ・コーラボトリングだ。担当エリア内の顧客数は4万9千件、管理する自動販売機は卸2万3千台、フルサービス3万台に上る。膨大な数の顧客と売り場を網羅するために、同社では20年以上も前からハンディターミナルを使ったモバイル受注システムを導入している。「それまでは営業担当者の手書きの受注伝票をキーパンチャーがコンピュータに入力していましたが、伝票の見間違いや作業量の増大による誤入力が度々発生していました。営業担当者がハンディターミナルで入力することで、入力作業を分散すると同時に、受注作業まで営業担当者に責任を持たせることが当初の狙いでした」(北陸コカ・コーラボトリング株式会社 常務取締役システム統括部長・株式会社ヒスコム代表取締役社長 清水淳正氏)。その後、システム分散処理化の流れに乗り、受注情報を店頭からホストコンピュータに送信したり、受注機能と配送機能を物理的に分けたり、ハンディターミナルで受注機能の中に売掛金代金回収処理なども行えるように機能が追加されていった。ハンディターミナルに入力した情報は業務終了時にまとめてアップロードし、夜中にバッチ処理をした上で、翌朝業務開始時までに取引先マスターや過去の販売実績、最新の売掛金情報などをダウンロードする仕組みが構築された。 |
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●セキュリティの確保と競争優位の確立が新たな課題に |
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しかし、このシステムを抜本的に見直すべき課題がいくつか浮上してきた。1つは、セキュリティの問題だ。古いシステムでは、全てのデータをハンディターミナルに持たせていたため、万が一、端末の紛失事故などが発生した場合、重要な顧客情報や取引情報が漏えいする危険があった。また、システムの機能追加が繰り返された結果、システムの肥大化も数々の問題を引き起こしていた。日次処理で全てのデータを処理しきれなくなり、ハンディターミナルには取引先マスターや売掛金情報などの必要最低限の情報しか持てなくなっていた。そして最も大きな問題意識となっていたのが、日々激しくなる飲料業界で競争力のあるシステムを実現できていないということだった。「コカ・コーラという強いブランドを持つ我々は、最初から優位な立場で事業を行なってきました。そのため、年々競争が激しくなる飲料業界にいながら、競合を意識した仕組み、例えばハンディターミナルがあるのに、受注をその場で即在庫を引き当てるといった基本的なシステムが構築できていませんでした」(清水氏)。 |
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●リアルタイム同期を可能にするモバイルデータベースを採用 |
今回リリースされる新たなモバイル受注システムは、同社の営業マン500人のうち、約220人が担当する卸の分野をカバーする。開発にあたり、北陸コカ・コーラボトリングがヒスコムに求めたのは、「端末の盗難や紛失があっても情報漏えいを防げる安全な仕組みの構築」、「本社サーバーとの同期を確実に取り、リアルタイムの在庫引き当ての実現」、「提案型の営業を強化できる基盤の構築」の3点だった。実現のためには、サーバーのメインデータベースであるOracle9iと高速に同期が取れるモバイルデータベースをプラットフォームとして採用することが条件だった。そこで選ばれたのがアイエニウェアのSQL AnywhereとMobile Linkだ。「決め手となったのはMobile Linkの差分同期ロジックがシンプルでわかりやすかったことです。初期コストの比較ではもっと安いソリューションはありましたが、トラブル時の対応や将来の運用コストを考えると、アイエニウェアの製品が最も使いやすいと判断し、導入を決めました」(株式会社ヒスコム取締役システム部部長 渡辺剛幸氏)。
新システムの特長は、ハンディターミナルには店頭での商談開始時に顧客情報や過去の取引実績データなどを本社データベースからダウンロードして商談に活用し商談終了時にはその店頭で消去することでセキュリティリスクを減らしたことと、商談終了時に受注情報をアップロードして本社データベースとハンディターミナルの情報の同期をとり、リアルタイムの在庫引き当てを可能にしたことだ。ハンディターミナルには常に本社データベースと同期した最新の受注情報が記録されており、営業支援情報として活用している。2005年の冬に採用を決定後、2006年6月に基本設計を終了。以後わずか半年で開発は完了し、2007年3月にはモバイル運用も含めた最終運用テストを行なっていた。ハンディターミナルには富士通のMultiPad、OSはWindows
CEを採用した。内部に重要データを持たせないだけでなく、システム起動にセキュリティキーや高度なデータ暗号化技術を採用することで、より安全性を高めている。
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●安全・安心な飲料を提供するために最新のITを活用 |
従来のハンディターミナルを使った受発注管理システムや自動販売機管理システムは、主に「いかに配送を効率化するか」という点に主眼が置かれていた。「本来であれば、きちんと品質管理された商品を、売場に品切れなく提供するためのロジスティクスなのに、システムの発想は逆になっていました」と清水氏は語る。次の課題として、ヒスコムの持つハンディターミナルのノウハウを活かして、自動販売機向けのモバイルシステムの開発に取り組んでいく。また、ヒスコムでは、今回のシステム開発で得た経験と、RFIDなどの最新技術を組み合わせたセキュリティソリューションも事業の柱にしていく考えだ。「飲料というのは人の身体に入るものですから、安心・安全が最も大切なことです。RFIDなどの新しい技術を、お客様が安心して飲める飲料を安全にお届けするために活用していきたい」(渡辺氏)。北陸コカ・コーラボトリングとヒスコムが創り出す新しいソリューションに今後も注目していきたい。 |
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■ A6サイズプリンターの採用で請求書即時発行にも対応 |
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営業担当者は前日までに組み立てた訪問ルートをもとに、顧客コードや商品マスターなどの基礎情報だけが入ったハンディターミナルを持って取引先に向かい、現場から携帯電話回線経由で本社サーバーに接続し、詳細な顧客情報や取引履歴、取引条件などのデータをハンディターミナルにダウンロードする。商談後再度サーバーに接続して受注情報などの入力とリアルタイムで在庫の引き当てを行い、本社側とハンディターミナル上のデータベースを同期させる。また、商談前にダウンロードした顧客情報や取引情報は自動消去される。ただし、地下や山間部で通信圏外となる訪問先に限っては、あらかじめ商談に必要な全情報をハンディターミナルに持たせるが、端末と人が一定以上の距離を離れると自動ロックがかかる仕組みや高度な暗号化技術によって、高いセキュリティーレベルが保たれている。当然ながら、受注情報引当後はハンディターミナル内の情報は自動消去される。
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北陸コカ・コーラボトリング株式会社
北陸三県と長野県を営業地域とする、コカ・コーラシステムの一員。1962年の創業以来、「地域に根ざしたリフレッシュメント企業」をモットーに日本コカ・コーラ社の製品を製造・販売してきている。
http://www.hokuriku.ccbc.co.jp |
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株式会社ヒスコム
2003年に北陸コカ・コーラボトリング株式会社の100%出資子会社として創業以来、同社の情報システムの構築および運用を請け負っている。また、ノウハウを活かし、ハンディターミナル、自動販売機、ロジスティクス、SFA、セキュリティなどのソリューション開発を手がける。
http://www.hiscom.co.jp |
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